特集：乳がん研究・解析
乳がんの研究や解析に使用される各種マーカー抗体を紹介します。
はじめに
乳がんは女性がもっとも多く発症するがん種であり、毎年新たにがんと診断される患者の約3人に1人は乳がんと診断されます。乳がんは全世界に共通して発症例の多いがんであり、2020年には全世界で約230万人が新たに乳がんに罹患しています。乳がんによる死亡率はこれまでの30年間で徐々に低下してきている一方、依然として女性のがんによる死亡原因では2番目に多い原因です。しかし、定期的なスクリーニング検査と転移前の早期治療により、乳がんに罹患したとしても健康な生活を送ることが可能です。大きく進展する乳がん研究分野のさらなる発展の一助となるべく、プロテインテックは従来の乳がんのターゲットに加え、近年報告が相次ぐ乳がんをターゲットとするマーカー抗体および免疫組織化学（IHC）染色キットを取り揃えています。
乳がん研究製品／マーカー抗体
HER2/ErbB2
HER2（Human epidermal growth factor receptor 2）は、上皮細胞増殖因子受容体（EGFR：Epidermal growth factor receptor）と類似した構造の受容体型チロシンキナーゼです。基本的にHER2下流のシグナル伝達は細胞の成長や増殖を促進します。一般的にHER2の発現は乳がん細胞で増加する傾向にあり、HER2陽性乳がんは乳がん全体の約15%を占めます。HER2陽性反応は、がんの悪性度と関連付けられます。そのため、HER2はがんの侵襲・転移の阻害を目的とする様々な乳がん治療で一般的に標的化されています。
HER2/ErbB2抗体（カタログ番号：18299-1-AP、希釈倍率1:600）を使用したパラフィン包埋ヒト乳がん組織スライドの免疫組織化学染色（10X）。
Ki67
Ki67は、一般的な細胞増殖マーカーであり、正常な乳房組織では基本的に低い発現レベルを示します。多くの場合、Ki67はエストロゲン受容体（ER：Estrogen receptor）陰性の乳がん細胞において過剰発現するため、ER陰性乳がんとその他の形態の乳がんを鑑別するために使用されます。
Ki67抗体（カタログ番号：27309-1-AP、希釈倍率1:16000）を使用したパラフィン包埋ヒト乳がん組織スライドの免疫組織化学染色（10X）。
E-Cadherin
E-カドヘリン（E-Cadherin）は、上皮で発現する細胞接着分子／細胞間結合タンパク質であり、乳房上皮組織で一般的に発現しています。E-カドヘリンの消失は、がん細胞の侵襲性や遊走性等の性質の獲得を伴います。E-カドヘリンは、浸潤性小葉癌等の数種類の乳がんでは発現しないため、検体中のE-カドヘリンの発現有無は乳がんの侵襲性と関連付けられます。プロテインテックのE-カドヘリン抗体は1,700報以上の論文に使用され、市販される抗体の中で論文引用実績が非常に多いE-カドヘリン抗体製品の1つです。
E-カドヘリン抗体（カタログ番号：20874-1-AP、希釈倍率1:4000）を使用したパラフィン包埋ヒト乳がん組織スライドの免疫組織化学染色（40X）。
乳がん研究・解析用抗体／各種マーカー抗体
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関連する機能 |
マーカー |
カタログ番号 |
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細胞増殖 |
11026-1-AP |
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26939-1-AP |
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21244-1-AP |
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18299-1-AP |
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27309-1-AP |
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10336-1-AP |
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25871-1-AP |
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20233-1-AP |
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がん幹細胞性 |
14139-1-AP |
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18330-1-AP |
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60224-1-Ig |
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細胞の生存 |
14453-1-AP |
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28076-1-AP |
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分化 |
17513-1-AP |
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17329-1-AP |
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転移 |
16447-1-AP |
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14695-1-AP |
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20874-1-AP |
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19970-1-AP |
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10371-2-AP |
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13801-1-AP |
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10853-1-AP |
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17968-1-AP |
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がん抑制 |
22362-1-AP |
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10060-1-AP |
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60283-2-Ig |
乳がん研究・解析用IHCキット
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関連する機能 |
マーカー |
カタログ番号 |
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細胞増殖 |
KHC0303 |
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KHC0038 |
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KHC0095 |
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がん幹細胞性 |
KHC0030 |
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分化 |
KHC0204 |
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KHC0034 |
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転移 |
KHC0010 |
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KHC0804 |
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KHC0461 |
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がん抑制 |
KHC0079 |
参考文献
- Breast cancer. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/breast-cancer（参照：2021.03.26）
- G Jerusalem, et al. HER2+ breast cancer treatment and cardiotoxicity: monitoring and management. Breast Cancer Res Treat. 2019 Sep;177(2):237-250.
- R Singhai, et al. E-Cadherin as a diagnostic biomarker in breast cancer. N Am J Med Sci. 2011 May;3(5):227-33.
- Ailin Zhang, X Mao, et al. The Role of Ki67 in Evaluating Neoadjuvant Endocrine Therapy of Hormone Receptor-Positive Breast Cancer. Front Endocrinol (Lausanne). 2021 Nov 3:12:687244.
