虹色のイメージングも夢ではない?―同種の免疫動物に由来する一次抗体を使用してマルチプレックス(多重)免疫蛍光染色を実現する方法

免疫蛍光染色(IF)実験における多重化で良好な結果を得るための技術的ヒントをプロテインテックのゲストブロガーが解説します。

Derek Sung著(Instagram:@Immunofluoresence

免疫蛍光染色(IF:Immunofluorescence)は、ウサギやマウスをはじめとする免疫動物で作製された一次抗体を使用して、標的タンパク質を特異的に検出することができる、生体内分子を試薬として利用した有用な実験手法です。免疫蛍光染色法は、細胞構造や組織構造を維持しつつ、細胞レベルや細胞小器官(オルガネラ)レベルでタンパク質の発現解析を可能にする技術であり、培養細胞から、組織切片、臓器全体まであらゆるサンプルを対象に適用することができます。

免疫蛍光染色で最も不都合なケースの1つは、2種類の異なるターゲットタンパク質を同時に染色する必要がある際に、手元にある抗体が同一の免疫動物に由来する抗体であるときです。免疫蛍光染色を実施する場合、まず初めに「基本的に同種の免疫動物に由来する一次抗体を2種類同時に使用しない」という極めて重要な原則を学びます。なぜなら、シグナルを検出する際に、一次抗体を産生した免疫動物のイムノグロブリンに特異的な二次抗体が、両方の一次抗体と反応してしまうからです。その結果、一次抗体が結合したそれぞれのターゲットのシグナルがすべて同一色素の蛍光シグナルで検出されることになり、二重染色実験にもかかわらず、両者の区別がつかなくなります。本稿では、プロテインテックの製品を使用したイメージング技術と実験手順を紹介するとともに、同一の免疫動物由来の一次抗体を使用して免疫蛍光染色を実施する方法について解説します。

同一の免疫動物由来の2種類の一次抗体を使用し、免疫蛍光染色を実施するためにはいくつかの方法があります。例えば、免疫動物が同一であっても互いにアイソタイプまたはサブクラスが異なる場合には、アイソタイプ特異的な二次抗体(例:抗IgG抗体と抗IgM抗体)やサブクラス特異的な二次抗体(例:抗IgG1抗体と抗IgG2b抗体)を使用する等の方法を利用できます。プロテインテックでは、多様なアイソタイプやサブクラス由来の抗体が必要とされる実験に適用可能な、様々な種類の一次抗体および二次抗体を取り揃えています。二次抗体を使用する方法以外には、標識済み一次抗体(あらかじめ蛍光色素を結合させた一次抗体)を使用して、同一の免疫動物由来の一次抗体でマルチプレックス(多重)染色を実現する方法が挙げられます。本稿では、蛍光色素標識済みの一次抗体を使用する方法を中心に解説を行います。使用する抗体の少なくとも1つが標識済み抗体である場合に本手法を適用することができます。

蛍光色素標識済み一次抗体には、多くの優れた点があります。

  • 二次抗体の添加が不要となるため、ワンステップで迅速にターゲットを検出することができます。

  • 同一の免疫動物由来の抗体を複数同時に使用できます。

  • 二次抗体を使用しないことから、二次抗体に由来するバックグラウンドが無く、多くの場合、良好な染色画像を得られます。

一方で、蛍光色素標識済み一次抗体にはいくつかの不便な点もあります。

  • 市販品が限られているため、利用できる蛍光色素の選択に制限が生じます。

  • 類似する蛍光特性を示す蛍光色素で標識された抗体を複数同時に使用することができません。

  • 二次抗体を使用する場合と比較し、シグナルが増幅されにくい傾向があります。

プロテインテックのCoraLite®(コ―ラライト)蛍光色素標識済み一次抗体は、様々なターゲットを網羅する豊富な製品ラインアップを取り揃えており、ターゲット毎に複数の蛍光色素オプションを備えています。CoraLite®(コーラライト)標識抗体は、高品質な免疫蛍光染色イメージングのための安定した蛍光シグナルを提供します。

 

同一の免疫動物由来の一次抗体でマルチプレックス染色を行う際に、蛍光標識済み一次抗体を使用する方法として2通りの手順を概説します。

蛍光色素標識済み一次抗体+未標識一次抗体を用いる場合(例. E-cadherinとCytokeratin 7の二重染色)

  1. 最初に、未標識E-cadherin抗体(カタログ番号:20874-1-AP、アイソタイプ:ウサギIgG)のみをサンプルに添加します。
  2. 1X PBSでサンプルを洗浄します。
  3. 抗ウサギIgG二次抗体とDAPIを添加し30分間インキュベーションします。
  4. 1X PBSでサンプルを3回以上洗浄し、過剰な二次抗体を除去します。
  5. CoraLite® 555標識Cytokeratin 7抗体(カタログ番号:CL555-15539、アイソタイプ:ウサギIgG)を単独でサンプルに添加します。
  6. 1X PBSでサンプルを洗浄し、スライドにマウントして画像を撮影します。

 

ヒント:ステップ4において、残存する二次抗体を十分に洗浄・除去してください。目的の一次抗体と結合せずに残存する二次抗体は、ステップ5で添加する蛍光標識済み一次抗体に反応性を示す可能性があるため、余計に洗浄しても問題はありません。

 

未標識E-cadherin抗体およびCoraLite® 555標識Cytokeratin 7抗体を使用した成人小腸のイメージング画像

未標識E-cadherin抗体(緑、カタログ番号:20874-1-AP)、CoraLite® 555標識Cytokeratin 7抗体(赤、カタログ番号:CL555-15539)を使用した成人小腸のイメージング画像。Cytokeratin 7抗体は、管腔側の腸上皮細胞を標識します。E-cadherin抗体は上皮細胞の細胞間接着を標識します。

 

2種類以上の蛍光色素標識済み一次抗体を使用する場合(例. Beta-III tubulin/TUBB3とCalbindinの二重染色)

2種類(あるいはそれ以上)の抗体が同一の免疫動物由来の蛍光標識済み一次抗体の場合、各抗体を同時に「そのまま」サンプルに添加することができます。二次抗体を使用しないため、同じ動物種由来の免疫グロブリンに対して二次抗体が非選択的に反応することを心配する必要はありません。使用する蛍光標識済み一次抗体にはそれぞれ異なる蛍光色素が標識されているように留意します。

CoraLite® 488標識Beta-III tubulin/TUBB3抗体およびCoraLite® 594標識Calbindin抗体を使用した新生児小脳のイメージング画像

新生児小脳のイメージング画像。緑:CoraLite® 488標識Beta-III tubulin/TUBB3抗体(カタログ番号:CL488-66375)。赤:CoraLite® 594標識Calbindin抗体(カタログ番号:CL594-66394)。Beta-III tubulin抗体は全てのニューロン(神経細胞)を標識します。Calbindin抗体は小脳内のプルキンエ細胞を標識します。

使用している一次抗体について、蛍光標識タイプの製品が販売されていない場合、ご自身で蛍光色素を標識することも検討してください。プロテインテックは、所要時間わずか10分でお手持ちの抗体を迅速かつ簡便に標識できるFlexAble(フレクサブル)抗体標識キットを販売しています。FlexAble(フレクサブル)は、高親和性リンカーを使用して、あらゆるバッファー条件の下で蛍光色素等の分子を標識することができる新しいタイプの抗体標識キットです。サンプルと一次抗体のインキュベーション前に、使用する一次抗体に対して簡便かつ迅速に蛍光色素を直接標識できるため、FlexAbleは同一の免疫動物由来の一次抗体を使用したマルチプレックス染色に最適なキットです。

CoraLite® 488 Kitで標識したTDP-43抗体、CoraLite® Plus 647 Kitで標識したTom20抗体、CoraLite® Plus 647 Kitで標識したLamin B1抗体を使用したHeLa細胞の免疫蛍光染色 CoraLite® Plus 555 Kitで標識したMAP2抗体、CoraLite® Plus 647 Kitで標識したGFAP抗体、CoraLite® 488標識TDP-43抗体を使用したラット脳組織の免疫蛍光染色

(左図)HeLa細胞の免疫蛍光染色画像。緑:FlexAble CoraLite® 488 Kit(カタログ番号:KFA001)で標識したTDP-43抗体(カタログ番号:10782-2-AP)。赤:FlexAble CoraLite® Plus 555 Kit(カタログ番号:KFA002)で標識したTom20抗体(カタログ番号:11802-1-AP)。シアン:FlexAble CoraLite® Plus 647 Kit(カタログ番号:KFA003)で標識したLamin B1抗体(カタログ番号:12987-1-AP)。
(右図)ラット脳組織の免疫蛍光染色画像。オレンジ:FlexAble CoraLite® Plus 555 Kit(カタログ番号:KFA002)で標識したMAP2抗体(カタログ番号:17490-1-AP)。マゼンタ:FlexAble CoraLite® Plus 647 Kit(カタログ番号:KFA003)で標識したGFAP抗体(カタログ番号:16825-1-AP)。緑:CoraLite® 488標識TDP-43抗体(カタログ番号:CL488-10782)。