細胞内フローサイトメトリー

細胞内フローサイトメトリーに最適なプロテインテック製品を紹介します。

Proteintech Coralites Excitation and emission Spectrum

細胞内フローサイトメトリー

細胞表面マーカーを染色する従来のフローサイトメトリーとは異なり、「細胞内フローサイトメトリー(Intracellular flow cytometry)」はリン酸化シグナル伝達因子、転写因子、サイトカイン等の細胞内のターゲットタンパク質を染色できるパワフルな手法です。

固定および透過処理を実施することで、抗体が細胞膜および核膜を透過して、細胞内のターゲットタンパク質を染色することができます。 プロテインテックは、細胞内フローサイトメトリー解析で高い再現性を実現する「Fix&Perm試薬(固定・透過処理)」と様々な抗体を取り揃えています。

細胞質ターゲットの検出

細胞内フローサイトメトリーは、単一細胞内の複数のターゲットを同時に検出するパワフルな手法です。 また、細胞内フローサイトメトリーは、免疫応答や炎症反応時のT細胞、B細胞、NK細胞の分化、活性化、可塑性の解析に有用なツールとなります。

細胞内フローサイトメトリーの適用において、細胞質中で重要なターゲットの1つは、免疫応答や炎症反応時にメディエーターとして機能する低分子分泌タンパク質のサイトカインです。 ELISAやウェスタンブロット(WB)による解析とは異なり、細胞内フローサイトメトリーは、細胞表面マーカーを標識する従来の手法と組み合わせることで、大きく不均一な細胞集団の中から、特定のサイトカインを発現する特定の細胞を正確に検出することができます。 サイトカイン等の細胞外分泌タンパク質を検出する手法では、ブレフェルジンA(Brefeldin A)やモネンシン(Monensin)等のタンパク質輸送阻害剤を使用し、サイトカインを分泌細胞内に「トラップ(貯留)」させることで目的のタンパク質を検出します。

サイトカイン以外の細胞質に存在するタンパク質も細胞内フローサイトメトリーによって検出することができます。プロテインテックは、細胞内フローサイトメトリーに使用できる多彩な蛍光色素標識抗体を多数取り揃えており、細胞内フローサイトメトリー解析用の関連試薬も提供しています。

ヒト末梢血単核細胞(PBMC:Peripheral Blood Mononuclear Cells)をLPS(Lipopolysaccharide)で刺激処理し、タンパク質輸送体阻害剤のブレフェルジンAで処理した。1×106個に調製した処理済み細胞の細胞表面をPE標識ヒトCD14抗体( カタログ番号:PE-65056 、クローン番号:UCHM-1)で染色し、4%PFAで固定、1×Flow Cytometry Perm Buffer(カタログ番号:PF00011-C で透過処理を実施した。 続いて、1µlのCoraLite®647標識ヒトIL-6抗体(カタログ番号:CL647-69001、クローン番号:4G3E6)またはCoraLite®647標識マウスIgG1アイソタイプコントロール抗体(カタログ番号:CL647-65124)で細胞内を染色した。 

ヒト末梢血単核細胞(PBMC:Peripheral Blood Mononuclear Cells)をPHA(Phytohemagglutinin)で3日間刺激処理した。 5µlのCoraLite®488標識ヒトCD107a抗体( カタログ番号:CL488-65051、クローン番号:H4A3)(赤)、または0.2µgのCoraLite®488標識マウスIgG1アイソタイプコントロール抗体(カタログ番号:CL488-65124)(青)で細胞内を染色した。 細胞は4%PFAで固定、1×Flow Cytometry Perm Buffer( カタログ番号:PF00011-C)で透過処理を実施し、リンパ球をゲートした。

細胞質タンパク質染色プロトコールの一例

用意する試薬

  • 4%PFA固定buffer(パラホルムアルデヒドが終濃度4%になるよう1×PBSに溶解し、pH7.4に調整する)
  • 10×Flow Cytometry Perm buffer(カタログ番号:PF00011-C)(使用前に、蒸留水以上のグレードの水で1×になるよう希釈する)
  • Flow Cytometry Staining Buffer(カタログ番号:PF00012
  • 1×PBS
  • フローサイトメトリー用抗体

実験手順

  1. 培養容器から細胞を採取します。 浮遊細胞の場合、400×gで5分間遠心し、上清を除去後、1×PBSを添加し再懸濁します。この操作を計2回繰り返して細胞を洗浄し、上清を捨てます。 接着細胞の場合、細胞を5分間トリプシン処理し、細胞培養培地を添加してトリプシン消化を停止させ、浮遊細胞と同様の操作で細胞を洗浄します。 染色に適した細胞数に調製し、5mLのポリスチレン製FACS用丸底チューブに分注します。
  2. 推奨濃度に調製した蛍光標識抗体で細胞表面マーカーを染色します。
  3. Flow cytometry staining buffer 1mLで細胞を洗浄して、400×gで5分間遠心し、上清を捨てます。
  4. 4%PFA固定buffer 200µlを添加して細胞を再懸濁し、穏やかにボルテックスして、暗所下4℃で30分~1時間インキュベーションします。
  5. 細胞を400×gで5分間遠心し上清を除去後、Flow Cytometry Perm buffer 2mLで再懸濁し、暗所下室温で5分間インキュベーションします。
  6. 細胞を400×gで5分間遠心し上清を除去後、1×Flow Cytometry Perm buffer 100µlで再懸濁します。 推奨濃度に調製した細胞内ターゲット検出用の蛍光標識抗体を添加し、暗所下室温で20~60分インキュベーションします。

注意:細胞内染色用抗体は必ず1×Flow Cytometry Perm bufferで調製してください。

  1. インキュベーション後、400×gで5分間遠心し上清を除去し、1×Flow Cytometry Staining Buffer 1mLで細胞を洗浄して、1×Flow Cytometry Staining Buffer 500µlで再懸濁し、フローサイトメーターで解析します。

オプション:未標識の一次抗体を使用する場合、一次抗体の添加およびインキュベーションの操作の後に、細胞を400×gで5分間遠心し上清を除去後、1×Flow Cytometry Perm buffer 100µlで再懸濁し、二次抗体0.1µgを各チューブに添加し、暗所下4℃で15分間インキュベーションします。  インキュベーション後、Flow Cytometry Staining Buffer 1mlで細胞を洗浄します。細胞を400×gで5分間遠心し上清を除去後、1× Flow Cytometry Staining buffer 500µlで再懸濁し、フローサイトメーターで解析します。

核内タンパク質染色プロトコールの一例

核内の転写因子やその他のタンパク質を染色するためには、細胞質ターゲットのプロトコールと同様に、細胞表面マーカーを染色後、細胞の固定および透過処理が必要となります。 転写因子の性質や、核内、DNA、その他のタンパク質と結合しているか等の局在によって、異なる固定や透過処理の操作が必要になる場合があります。

細胞固定および透過処理方法によっては細胞表面マーカーの染色が損なわれる可能性があるため、選択するバッファーの適合性がより重要となります。 プロテインテックでは転写因子の検出をより簡便に実施できるように、核内ターゲットのフローサイトメトリー解析の際に最適な解像度と低バックグラウンドを実現する、特別に調製されたFoxp3 / Transcription Factor Staining Buffer Kit(カタログ番号:PF00011) の使用をおすすめしています。 本キット付属の固定および透過試薬を使用することで、細胞膜と核膜が透過され、抗体は細胞内ターゲットタンパク質を染色できるようになります。 さらに、プロテインテックで検証済みの細胞内フローサイトメトリー用抗体と組み合わせることで、より良好な解析結果を得られます。

1×106個に調製したマウス脾臓細胞の細胞表面をPE標識マウスCD4抗体( カタログ番号:PE-65104、クローン番号:GK1.5)で染色後、Transcription Factor Staining Buffer Kit(カタログ番号:PF00011)で固定および透過処理した。 続いて、5µlのCoraLite®647標識マウスFoxp3抗体(カタログ番号:CL647-65089、クローン番号:3G3)、またはCoraLite®647標識マウスIgG1アイソタイプコントロール抗体(カタログ番号:CL647-65124)で細胞を染色した。

核内染色プロトコールの一例

用意する試薬

Foxp3 / Transcription Factor Staining Buffer Kit(カタログ番号:PF00011 、構成品:PF00011-A、PF00011-B、PF00011-C)

実験手順

  1. 培養容器から細胞を採取します。 浮遊細胞の場合、400×gで5分間遠心し、上清を除去後、1×PBSを添加し再懸濁します。この操作を計2回繰り返して細胞を洗浄し、上清を捨てます。 接着細胞の場合、細胞を5分間トリプシン処理し、細胞培養培地を添加してトリプシン消化を停止させ、浮遊細胞と同様の操作で細胞を洗浄します。 染色に適した細胞数に調製し、5mLのポリスチレン製FACS用丸底チューブに分注します。
  2. 推奨濃度に調製した蛍光標識抗体で細胞表面マーカーを染色します。Flow cytometry staining buffer 1mLで細胞を洗浄して、400×gで5分間遠心し、上清を捨てます。
  3. Transcription Factor Fix/Perm buffer 200µlを添加して細胞を再懸濁し、穏やかにボルテックスして、暗所下4℃で30分~1時間インキュベーションします。
  4. 細胞を400×gで5分間遠心し上清を除去後、Flow Cytometry Perm buffer 2mLで再懸濁し、暗所下室温で5分間インキュベーションします。
  5. 細胞を400×gで5分間遠心し上清を除去後、1×Flow Cytometry Perm buffer 100µlで再懸濁します。 推奨濃度に調製した細胞内ターゲット検出用の蛍光標識抗体を添加し、暗所下室温で20~60分インキュベーションします。

注意:細胞内染色用抗体は必ず1×Flow Cytometry Perm bufferで調製してください。

  1. インキュベーション後、400×gで5分間遠心し上清を除去し、1×Flow Cytometry Staining Buffer 1mLで細胞を洗浄して、1×Flow Cytometry Staining Buffer 500µlで再懸濁し、フローサイトメーターで解析します。

オプション:未標識の一次抗体を使用する場合、一次抗体の添加およびインキュベーションの操作の後に、細胞を400×gで5分間遠心し上清を除去後、1×Flow Cytometry Perm buffer 100µlで再懸濁し、二次抗体0.1µgを各チューブに添加し、暗所下4℃で15分間インキュベーションします。 インキュベーション後、Flow Cytometry Staining Buffer 1mlで細胞を洗浄します。細胞を400×gで5分間遠心し上清を除去後、1× Flow Cytometry Staining buffer 500µlで再懸濁し、フローサイトメーターで解析します。

Fix&Perm試薬(固定・透過処理)

Foxp3 / Transcription Factor Staining Buffer Kit

Foxp3 / Transcription Factor Staining Buffer Kitは、核内ターゲットのフローサイトメトリー解析の際に最適な解像度と低バックグラウンドを実現する、特別に調製したバッファーと溶液のセット製品です。

Foxp3 / Transcription Factor Fix/Perm Concentrate (4X)

Foxp3 / Transcription Factor Fix/Perm Diluent (1X)で細胞を処理すると、蛍光標識抗体を用いる細胞内染色で良好な結果を得ることができます。濃縮溶液の状態でお届けします。

Foxp3 / Transcription Factor Fix/Perm Diluent (1X)

Foxp3 / Transcription Factor Fix/Perm Concentrate (4X)の希釈剤として使用します。

Flow Cytometry Perm Buffer (10X)

染色と洗浄操作中の細胞膜の透過性を維持し、サイトカインおよびその他の細胞質抗原の細胞内染色時に良好な結果を得られます。濃縮溶液の状態でお届けします。蒸留水以上のグレードの水で1×濃度に希釈して使用してください。

Flow Cytometry Staining Buffer (1X)

すぐに使用できるFlow Cytometry Staining Buffer (1X)です。フローサイトメトリープロトコール中で生細胞や固定細胞を再懸濁する際に使用します。

RBC Lysis Buffer (10X)

RBC Lysis Buffer (10X)は、塩化アンモニウム系の溶血剤(濃縮液)です。 1×濃度に希釈した溶液は、細胞懸濁液中の白血球への影響を最小限に抑えつつ、赤血球を溶血します。