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若手研究者インタビュー:Odetta Antico氏

スコットランドDundee大学に在籍するOdetta Antico氏に、これまでの研究キャリア、最近Science Advances誌に発表した論文、研究での困難や行き詰まった際の対処方法について語っていただきました。


Odetta Antico氏はDundee大学の博士課程に在籍し、プロテオミクスの手法を用いてパーキンソン病におけるミトコンドリアネットワークの研究に取り組んでいます。2021年、彼女はScience Advances誌に画期的な論文「Global ubiquitylation analysis of mitochondria in primary neurons identifies endogenous Parkin targets following activation of PINK1(PMID:34767452)」を発表しました。

本インタビューでは、この論文について触れつつ、スコットランドとイタリア双方での暮らし、研究に取り組む姿勢やその哲学について語っていただきました。博士論文を提出したばかりのOdetta Antico氏の近日予定されている口頭審査での健闘を、プロテインテックは心より願っています。

Odetta氏と共同研究者チームは、免疫蛍光染色・ウェスタンブロット・免疫沈降等の実験で10種類ものプロテインテック抗体を使用して研究データを取得しました。

Odetta Antico氏近影 
はじめに、貴重なお時間をいただき心より感謝いたします。Science Advances誌への論文掲載も記憶に新しいですね!まずは、自己紹介とこれまでのご経歴、現在のポジションについてお聞かせいただけますか?

私たちの研究に興味を持っていただき、このようなインタビューの機会をいただけたことを大変光栄に思います。正直に言うと、自分自身のことについて語るのは少々気恥ずかしいところもありますが、あえて自己紹介するならば「未知の分野を探求し、共通のミッションを分かち合い、異なる分野との架け橋となることを目指す神経科学者」といったところでしょうか。

私は修士課程の学生の頃に神経科学の面白さに魅了され、「The amyloid cascade hypothesis(アミロイドカスケード仮説)」に関する論文に刺激を受け、神経変性疾患の研究を志すようになりました。私の研究キャリアの始まりは、Turin大学とジェノヴァのItalian Institute of Technology(IIT)のアルツハイマー病に関するプロジェクトでした。その後、研究の方向性に新たな展開があり、ミラノのSan Raffaele Instituteでシヌクレイノパチーを対象とした遺伝子治療技術の研究に取り組みました。そこからパーキンソン病研究の道へと進み、スコットランドのDundee大学のMuqit研究室のメンバーとなり、神経細胞におけるPINK1とParkinの役割にフォーカスした博士課程の研究を開始しました。そして、つい先日博士論文を提出しました(!)。

 

本当にお疲れ様でした!ここからは、もう少しご自身のことについてお聞かせください。イタリアからスコットランドへ移住してみていかがですか?ダンディー市での生活の魅力や、故郷で一番恋しいと思うものを教えてください。

スコットランドは訪れる人々を温かく受け入れてくれる場所で、人々は非常に友好的です。訪れるべき魅力的な場所が多くあり、空いた時間には素晴らしい野外のアクティビティを楽しめます。ダンディーに住めば研究とプライベートを両立させることができますし、国際色豊かなMRC PPUは私生活と研究の双方において人々を結びつける様々なサポート体制が整っています。私個人としても、充実した研究施設や協力的な環境で自分の発想を実行に移す機会に恵まれました。とはいえ、故郷のイタリアへの思いは特別です。大好きなピザやパスタ、マンドリンといった定番の魅力だけでなく、自国について心底誇りに思っているのは「美意識を探求する姿勢」です。私の言う美意識とは、真摯な取り組み、献身、細部にこだわる妥協しない洗練のことであり、そうした姿勢は個人的にも研究者としても双方に大きな価値を与えてくれると思っています。

 

博士課程の学生でありながら、筆頭著者としてScience Advances誌に論文が掲載されるという素晴らしい成果を挙げられました。発表された論文「Global ubiquitylation analysis of mitochondria in primary neurons identifies endogenous Parkin targets following activation of PINK1」にまつわる概要を教えていただけますか?

今から20年以上前、PINK1遺伝子とParkin遺伝子は、遺伝性(家族性)パーキンソン病における原因遺伝子としてそれぞれ独立して同定されました。その数年後、作用機序の研究によって、PINK1とParkinは同一の分子経路で連携し、放置すれば蓄積して神経毒性作用を示す損傷ミトコンドリアを除去することが明らかになりました。成熟した機能性ニューロンにおいて、PINK1とParkinがどのように損傷ミトコンドリアの再編成やミトコンドリア毒性の抑制に関わるのか、そのメカニズムは解明されていませんでした。そこで、私たちはPINK1-Parkin研究におけるこの未解明な空白領域を埋めるべく研究に取り組みました。

 

この研究成果がパーキンソン病研究にもたらすインパクトについてお聞かせください。論文の研究成果を治療戦略の開発につなげるには、今後どのようなフォローアップ研究が求められるでしょうか?

私たちが取得したデータは、マウスのニューロンにおいて100種類を超えるミトコンドリアタンパク質がPINK1とParkinによって制御されていることを示しています。マウスとヒトのニューロンを比較することで、ミトコンドリアの運命を制御すると考えられる22種類の共通する特徴的なミトコンドリア標的分子群を同定できました。これらの標的タンパク質はパーキンソン病の病状進行の重要な制御因子であると考えられ、病期モニタリングのためのバイオマーカーやミトコンドリアの病態的変化を防ぐ創薬ターゲットの同定に利用できる可能性があります。

 

研究を進めるうえで、挫折や試練を避けて通ることはできません。どのようにこれらの困難を克服したのでしょうか?また、困難に直面する若手研究者へのメッセージがあればお聞かせください。

困難に立ち向かうために、自分なりの「方法論(アプローチ)」をもっていることの重要性を強く実感しています。研究者として最も困難で複雑な状況にあった時、ルネ・デカルトの「方法序説」は私の不安を和らげ、思考を打ち破る視点をもたらしてくれました。したがって、研究者としてのキャリア形成のどこかで、自分独自のアプローチの探求・確立に努めることを強くおすすめします。私からまずお伝えしたいアドバイスは、ルネ・デカルトの言葉に要約されています。『Never to accept anything as true when I did not recognize it clearly to be so. Divide up the difficulties which I should examine into as many parts as possible, for their better solution.(自分が明証的に真であると認めたもの以外は決して真として受け入れないこと。検討すべき難問をよりよく解決するために、できる限り多くの小部分に分割して考えること。)』。

そして、私のアプローチの根幹にあるのは『Plan-verify-corroborate(計画-検証-実証)』という3つのキーワードです。研究課題の疑問を解決できる正しい実験系を計画するために多くの時間を費やしましょう。流行の実験手法に目移りしたり、自分の得意な実験手法だけに固執することがないように留意しましょう。実験データが正しいか確認し裏付けを取る前に、技術面の問題を再点検しましょう。技術的検証を行っても問題が見当たらずデータが揺るぎないものであれば、その結果は極めて確実性が高いと判断できます。次に、得られたデータが語るありのままの事実を「傾聴」します。自分が描いたストーリーに合わせて得られたデータを都合よく解釈してはなりません。予想に反するデータが得られたとしても、それは重要なデータである可能性があり、将来的に驚くような発見に繋がるかもしれません。そうして課題に真摯に向き合い続ければ、後になって自分自身が大きな成長を遂げ、直面した困難が研究者としてのスキルを高めてくれたことにきっと驚くことでしょう。

 

これほどの規模の研究を1人だけで完遂することはできません。本論文の発表にあたり、特に感謝を伝えたい方はどなたでしょうか?

本当にその通りです。今回の研究のような挑戦的なプロジェクトは共著者全員の卓越したプロ意識と高度な専門知識なしには成立しなかったでしょう。共著者全員に心より深く感謝いたします。特に、Miratul Muqit教授にはこの意欲的なプロジェクトに挑戦する機会を私に与えてくださったことから、またWade Harper教授・Alban Ordureau博士にはこのプロジェクトで非常に貴重な専門的知見を示していただいたことから、感謝の意を表します。

私はかねてより、人が備える個性や人柄を心からリスペクトしています。だからこそ最後に、これまで研究キャリアを重ねる過程で出会った、才能に溢れ知識の豊富な同僚や友人たち全員に心から感謝の気持ちを伝えたいと思います。科学に対する彼らの誠実で独創的かつひたむきな情熱から学んだ多くのことが、今回のプロジェクトを完遂し無事に論文として実を結ぶ原動力となりました。

 

Science Advances誌論文に使用されたプロテインテックの抗体

製品名

カタログ番号

タイプ

CISD1 Antibody

16006-1-AP

ポリクローナル

FBXO41 Antibody

24519-1-AP

ポリクローナル

HSDL1 Antibody

16988-1-AP

ポリクローナル

MAOA Antibody

10539-1-AP

ポリクローナル

MAPRE2 Antibody

10364-1-AP

ポリクローナル

MFN2 Antibody

12186-1-AP

ポリクローナル

MIRO2 Antibody

11237-1-AP

ポリクローナル

PKC Gamma Antibody

14364-1-AP

ポリクローナル

SLC25A46 Antibody

12277-1-AP

ポリクローナル

TDRKH-specific Antibody

13528-1-AP

ポリクローナル

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