エクソソーム:小さな「プレイヤー」が果たす大きな役割

最新の研究により疾病におけるエクソソームの役割が徐々に明らかになっています。


エクソソーム(Exosome)とは、細胞によって分泌される高分子の小胞(30~120nm)であり、がんや神経変性疾患、免疫学等の多数の研究分野で注目される研究対象となっています。エクソソームは、当初ヒツジの網状赤血球の成熟過程でトランスフェリン受容体が分泌されることが見出され、その現象に関与する物質として1983年にRose Johnstoneのグループによって初めて報告されました(1)。その後、小胞研究の技術が向上し、Lötvallらによってエクソソーム内のRNAが細胞間の情報交換に関与することが発見されて以降(2)、様々なシグナル伝達に寄与するエクソソームのニッチなメカニズムが判明しています。さらにエクソソームはタンパク質も含有し、唾液、血液、尿等の様々な体液に認められることが明らかになりました(3)。

通常の小胞と同様に、エクソソームはエンドソームを経由して形成・分泌されます。後期エンドソーム(late endosome)への成熟時、様々な高分子を含有する腔内膜小胞(ILV、intraluminal membrane vesicle)がエンドソーム内で形成されます。その後、後期エンドソームはリソソームと融合するのではなく、細胞膜と融合することで腔内膜小胞をエクソソームとして放出します。

がん、免疫学、診断への応用

最新の研究により、エクソソームの様々な役割が明らかになっています。例えば、Chengらは、エクソソームが心筋梗塞後の心臓組織修復に関与し、骨髄前駆細胞を動員するmiRNAを伝達することを示しました(13)。また、テキサス大学医学部のRamkumar Menonのグループは、母親由来のエクソソームが成長中の胎児に送達され、組織機能に影響を及ぼす可能性があることを明らかにしました(14)。がんに関する分野では、Chenらが転移性病変部位から分泌されるPD-L1を含むエクソソームが腫瘍による免疫抑制効果を増強し、がん免疫療法実施後の転帰不良と関連することを報告しています(12)。最後に、Fanらは、がん細胞が既知の経路とは異なるエクソソーム形成経路を介して、発がん促進性エクソソームを分泌する可能性を示しました(15)。 

エクソソームには、その内包物質、特異的な送達様式/細胞指向性、偏在性から、診断や薬物送達での応用が期待されています。エクソソームは分泌細胞に由来するタンパク質や核酸を含むため、疾病の診断やモニタリングに用いる研究が進められています(6)。例えば、メラノーマ患者では血中エクソソームCD63濃度が上昇することが報告されています(4)。また、タウタンパク質を含むエクソソームは、初期のアルツハイマー病の発症を検知するために使用できる可能性が示唆されています(5)。

診断に応用できる可能性に加え、エクソソームは薬物送達システムへの応用も期待されています(7)。現在のナノ粒子による薬物送達システムの欠点として、患部に到達する前に薬物が放出してしまったり、免疫原性が高いといった点が挙げられます。しかし、エクソソームは免疫原性が低く、薬物を内包させることが可能であり、表面分子を介して特定の細胞を標的化することができます。また、エクソソームは血液脳関門(BBB、blood-brain barrier)を通過することができるほど小さいことから、神経変性疾患や脳腫瘍の治療に応用できる可能性があります(8)。

エクソソームの研究法

エクソソームを単離・回収して研究する場合、ショ糖密度勾配遠心法や超遠心分画法(ペレットダウン法)等のいくつかの生化学的手法が存在します。サイズが小さいことに加え、エクソソームは不安定で分解しやすいため、取り扱いには困難を伴います。超遠心分画法(ペレットダウン法)は安価な手法ですが、膜が変性したり、その他の構成物質が破壊されることで、回収量が低くなる場合があります。対照的に、ショ糖密度勾配遠心法は濃度の異なる溶液が「クッション」となると同時に、沈降速度の異なる夾雑物を除去することが可能であり、回収率が高くワークフローを改善したプロトコールが考案されています。

目的のエクソソーム回収後の特性解析には、フローサイトメトリーがよく使用されます(9、10)。細胞表面マーカーを調べることで、エクソソームが分泌された細胞や、潜在的な細胞指向性に関する情報を得ることができます。例えば、ICAM-1、B7.2(CD86)、MHCクラスⅡが存在する場合、エクソソームを分泌した細胞は樹状細胞であることを示唆します(11)。

エクソソームについては多くのことが未解明となっています。プロテインテックは、エクソソーム研究をサポートする有用なマーカー抗体を幅広く取り揃えています。以下のリストには、エクソソーム研究によく用いられるマーカーを掲載しています。

ターゲット カタログ番号 文献 アプリケーション
ALIX 12422-1-AP 129 WB, IP, IHC, IF, ELISA
Annexin V 66245-1-Ig   WB, IHC, IF, FC, ELISA
Calnexin CL488-66903   IF
CD9 FITC-65070 1 FC
CD63 25682-1-AP 234 WB, IHC, IF, FC, ELISA
CD81 66866-1-Ig 72 WB, IHC, IF, FC, ELISA
EPCAM/CD326 CL594-66316   IF
Flotillin 1 15571-1-AP 31 WB, IP, IHC, IF, FC, CoIP, ELISA
GOLGA2/GM130 11308-1-AP 81 WB, IHC, IF, FC, ELISA
GRP94 60012-1-Ig 6 WB, IHC, IF, FC, CoIP, ELISA
MIA 15734-1-AP 1 IHC, ELISA
RAB11A 20229-1-AP 14 WB, IP, IHC, IF, ELISA
Syntenin-1 22399-1-AP 12 WB, IP, IHC, IF, FC, ELISA
TSG101 14497-1-AP 189 WB, RIP, IP, IHC, IF, FC, ELISA

 

ブログ著者:Sreethu Sankar(プロテインテック・プロダクトマネージャー)


参考文献:

  1. B T Pan, R M Johnstone. Fate of the transferrin receptor during maturation of sheep reticulocytes in vitro: selective externalization of the receptor. Cell. 1983 Jul;33(3):967-78.
  2. H Valadi, et al. Exosome-mediated transfer of mRNAs and microRNAs is a novel mechanism of genetic exchange between cells. Nat Cell Biol. 2007 Jun;9(6):654-9.
  3. J Lin, et al. Exosomes: novel biomarkers for clinical diagnosis. Scientific World Journal. 2015;2015:657086.
  4. M Logozzi, et al. High levels of exosomes expressing CD63 and caveolin-1 in plasma of melanoma patients. PLoS One. 2009;4(4):e5219.
  5. S Saman, et al. Exosome-associated tau is secreted in tauopathy models and is selectively phosphorylated in cerebrospinal fluid in early Alzheimer disease. J Biol Chem. 2012 Feb 3;287(6):3842-9.
  6. CL Chen, et al. Comparative and targeted proteomic analyses of urinary microparticles from bladder cancer and hernia patients. J Proteome Res. 2012 Dec 7;11(12):5611-29.
  7. N Arrighetti, et al. Exosome-like Nanovectors for Drug Delivery in Cancer. Curr Med Chem. 2019;26(33):6132-6148.
  8. L Alvarez-Erviti, et al. Delivery of siRNA to the mouse brain by systemic injection of targeted exosomes. Nat Biotechnol. 2011 Apr;29(4):341-5.
  9. BK Parida, et al. Silica microspheres are superior to polystyrene for microvesicle analysis by flow cytometry. Thromb Res. 2015 May;135(5):1000-6.
  10. MN Theodoraki, et al. Evaluation of Exosome Proteins by on-Bead Flow Cytometry. Cytometry A. 2021 Apr;99(4):372-381.
  11. E Segura, et al. Mature dendritic cells secrete exosomes with strong ability to induce antigen-specific effector immune responses. Blood Cells Mol Dis. 2005 Sep-Oct;35(2):89-93.
  12. G Chen, AC Huang, et al. Exosomal PD-L1 contributes to immunosuppression and is associated with anti-PD-1 response. Nature. 2018 Aug;560(7718):382-386.
  13. M Cheng, et al. Circulating myocardial microRNAs from infarcted hearts are carried in exosomes and mobilise bone marrow progenitor cells. Nat Commun. 2019 Feb 27;10(1):959.
  14. S Sheller-Miller, et al. Cyclic-recombinase-reporter mouse model to determine exosome communication and function during pregnancy. Am J Obstet Gynecol. 2019 Nov;221(5):502.e1-502.e12.
  15. SJ Fan, B Kroeger, et al. Glutamine deprivation alters the origin and function of cancer cell exosomes. EMBO J. 2020 Aug 17;39(16):e103009.