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現役CEOに学ぶ博士号取得後の起業術

アカデミアからビジネスの世界へキャリアの可能性を模索したことはありますか?QV Bioelectronics社の共同設立者兼CEOであるChris Bullock博士の、博士号取得後の起業に向けたアドバイスをご紹介します。

博士号取得までの研究生活は過酷で終わりの見えないタスクに思えるかもしれませんが、いつかは完結する日を迎えます。そのような中で学生の多くが抱える大問題の1つが「博士課程を修了した後の進路はどうするべきか」です。一部の学生は最初からアカデミアで業績を残すことを目標に、競争率の高い教授職を目指します。一方で進路を決めかねている学生も存在しますが、アカデミアという同じような価値観のコミュニティに身を置いていると社会の他の選択肢を知る機会に恵まれないのが現状です。一般的なキャリアパスではないにせよ、自分で事業を立ち上げて起業家になるという道も選択肢の1つとして挙げられます。これは途方もなくハードルが高く、実現不可能に思える選択肢かもしれませんが、簡単に棄却すべきでない発想です。プロテインテックは、QV Bioelectronics社(qvbio.co.uk)の共同設立者兼CEOであるChris Bullock博士を取材し、博士課程修了後に起業家になるための助言をいただきました。

Chris氏は英国Leeds大学で生体医工学(Biomedical Engineering)の修士課程(MEng)を修了後、Manchester大学の博士課程へ進み2018年に再生医療に関する研究で博士号を取得しました。博士論文のテーマが胚性幹細胞(ES細胞)の分化誘導における革新的手段としての電気刺激の利用であったことから、この研究を通じてバイオマテリアル分野やバイオエレクトロニクス分野に関する貴重な専門的経験を積みました。

博士号を取得した後、Chris氏はClinical research fellowで脳神経外科医のRichard Fu博士と共同でQV Bioelectronics社を設立しました。QV Bioelectronics社は、難治性で治療抵抗性の高い脳腫瘍である膠芽腫を対象にした、電場を利用する医療機器の開発に取り組む会社です。QV Bioelectronics社は、腫瘍辺縁部に対し電場を印加することでがん細胞の細胞周期を攪乱し、腫瘍の増殖速度を抑制する埋め込み型デバイスの開発を目指しています。この技術の実用化にはまだ長い時間を要するものの、企業として驚くべき速度で成長を遂げています。同社はシード資金調達に加え、英国の支援プログラム(UK national accelerator program)や政府系資金助成機関から初期資金を獲得しています。現在、QV Bioelectronics社はマンチェスター近郊の大規模なバイオテック拠点であるAlderley Parkにオフィスを構え、技術コンセプトを実用化するべく研究者やアドバイザーからなる研究開発チームを抱えています。

 

アカデミアからスタートアップ企業の立ち上げへ:成功のための4つのポイント

 

1. すべては優れたアイデアから

起業のプロセスは、実験を構築する作業と非常によく似ています。ビジネスの構想を1つの仮説と捉えると、その構想の妥当性をできる限り単純明快な手順で実証・反証するプロセスを計画する必要があります。起業家であることと研究者であることには、多くの共通要素が存在します。ビジネス上の諸問題を解決するための着想は、普段の生活やラボのベンチで思考を巡らせる時間に根差しているケースが多々あります。また、単純な解決策が最善策であるという事例が少なくありません。

 

2. 十分な事前調査を実施する

将来的な顧客候補やステークホルダー(利害関係者)に、自分のビジネスの構想やプロジェクトに関する話を聞いてもらいましょう。忌憚のない率直なフィードバックを求め、彼らの回答に注意深く耳を傾けましょう。多くの人々の意見を集めて『n数』を増やせば、自社製品や提供を予定するサービスに対する市場の反応を的確に把握できるようになります。同時に、回答に発生し得るバイアスにも注意を払いましょう。例えば、競合ビジネスに利害関係のある人物に話をした場合、建設的で好意的なフィードバックを得られる可能性は低いでしょう。

 

3. 資金調達の進め方

自身の会社を設立する際に、資金調達が最大の難関であることは言うまでもありません。会社設立の資金を獲得する最善策の1つとして、できるかぎり迅速に製品を発表し販売を開始するという手段が挙げられます。この方法であれば、得られた収益を事業に再投資しつつ、顧客からのフィードバックに基づいて段階的に製品の改良を重ねられます。ただちに販売できない製品(例:医薬品・医療機器)の場合や、莫大な初期投資費用が必要な製品の場合は、別の手段で資金を調達する必要があります。例えば、英国にはスタートアップ企業が応募可能なアクセラレーター・プログラムや資金援助機関が存在します。地域の利用可能な制度や選択肢を調査し、業界内の先達から資金確保に関する助言を仰ぎ、挑戦する事業に賛同してくれそうな投資家に話を持ちかけてみましょう。

投資家や資金提供機関へ向けて事業計画をプレゼンする際は、あえて出資してもらえる可能性が最も低いと思われる相手から順番にアプローチしてみましょう。この作戦で貴重なフィードバックを収集し、本命の相手にアプローチする前に事業計画をブラッシュアップして完成度を高めることができます。

 

4. リスクを恐れない

博士号取得者や科学者は本来リスクを回避する傾向にありますが、実はレジリエンス・分析的思考力・複雑な課題解決の実践経験のような起業に最適なスキルを備えています。スタートアップ企業の大半が設立から数年以内に姿を消していきますが、その事実に意気消沈する必要はありません。一連の挑戦で得られた機会や経験は、今後のキャリア形成において極めて価値の高い財産となるはずです。何も挑戦しない道を選ぶよりも、はるかに優位な立場に身を置くことができるでしょう。

 

QV Bioelectronics社の技術に関心を持たれた方はこちらの技術紹介(qvbio.co.uk)をご覧ください。プロテインテックは若手研究者向けのキャリア形成のヒントやアドバイスを提供しています。詳しくはEarly Career Researcher Hub(ptglab.com)をご覧ください。

 

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