Nano-CaptureLigand™を用いたバイオレイヤー干渉法によるCOVID-19関連抗体の特性解析

Nano-CaptureLigand™(ナノキャプチャーリガンド)を用いて、新型コロナウイルスに対する抗体を担体に固定化し、標的タンパク質であるSARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に対する結合特性(ka、kd、KD値)を解析しました。


抗体の結合特性解析

抗体とターゲットの結合特性を示すために重要な側面は、抗体とターゲット間の親和性および結合カイネティクスです。結合特性に関するパラメーターを求めるために、表面プラズモン共鳴法(SPR:Surface Plasmon Resonance)、バイオレイヤー干渉法(BLI:Bio-Layer Interferometry)、マイクロスケール熱泳動(MicroScale Thermophoresis)、ELISA法(Enzyme-linked Immunosorbent Assay)等の様々な生物物理学的手法が用いられます。解析に用いる手法によっては、担体表層に抗体を固定化後、ターゲットとなる抗原を結合させ、解離定数(KD)、結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)を求める場合があります(kaおよびkdは、それぞれkonおよびkoffとも呼ばれ、KDあるいはon-off rateの算出に用いられます)。

適切な抗体固定化法は、親和性および結合カイネティクスを正確に解析するために非常に重要です。特に、抗体のパラトープ(抗原結合部位)が抗原に結合できる状態を維持できるように、部位特異的な固定化法が必要とされます。また、抗体はネイティブ型にフォールディングされ、抗原との結合能を維持した状態で固定化される必要があります。さらに、測定時に抗体が担体表層から解離しないように、強固に固定化されていなければなりません。すなわち、抗体が修飾されたり変性したりしない、穏やかな条件で強固かつ部位特異的に固定化できる手法が必要となります。

本稿では、Nano-CaptureLigand™(ナノキャプチャーリガンド、ビオチン標識アルパカ由来抗イムノグロブリン(Ig)抗体)を用いることで、抗体に不要な修飾を加えることや変性させることなく、ストレプトアビジンがコーティングされた担体表面に抗体を固定化し、結合特性を解析した例を示します。固定化する抗体には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患者から取得・クローン化された組換えキメラ化SARS-CoV-2抗体を用いました。固定化されたSARS-CoV-2抗体は、標的タンパク質であるSARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に対する結合特性として、kakd、KDの値を求めることで解析されました。

 

Nano-CaptureLigand™の利用方法について

クロモテック(2020年よりプロテインテックの一部)のNano-CaptureLigand™は、BLI等のバイオセンサーアッセイにおいて、穏やかな条件を適用でき、部位特異的かつ均一に抗体を固定化できる捕捉試薬です。Nano-CaptureLigand™は、アルパカ重鎖由来のVHH抗体(別名:Nanobody®)をビオチン化した抗イムノグロブリン(Ig)抗体製品です。Nano-CaptureLigand™は、ストレプトアビジン/アビジンをコーティングした担体表面へ固定化され、高い特異性で未標識抗体をさらに認識・捕捉することができます。

Nano-Capture Ligand™は、高い親和性で未標識抗体を捕捉・固定化するため、抗体の解離はごくわずかであり、安定したベースラインを提供します。また、複数回にわたり再生可能であり、再利用することができます。さらに、Nano-Capture Ligand™は、ハイブリドーマ上清、血清、血漿等のクルードな溶液(粗精製サンプル)からの選択的な抗体固定化を実現します。

Nano-Capture Ligand™は、以下に示すターゲット抗体を捕捉できる製品を取り揃えています。これらの製品を使用して、BLI、SPR、ELISAアッセイ等を実施できます。

 

Nano-CaptureLigandを使用したBLIの模式図(担体固定、サンプルローディング、IgG捕捉、目的物質の結合・解離、結合カイネティクス、グラフ)

SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に対するヒト抗体(CR3022)のBLIによる結合カイネティクス解析
詳細は以下のアプリケーションノートをご覧ください。

 

アプリケーションノートの概要

プロテインテックのアプリケーションノート「Nano-CaptureLigands for COVID-19 antibodies capture in BLI binding kinetics assay[PDF]」は、BLIによる機能性抗体の特性解析において、Nano-Capture Ligand™が高いパフォーマンスを発揮する捕捉ツールであることを実証しています。本アプリケーションノートでは、SARS-CoV-2罹患者から取得・クローン化されたSARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を認識するSARS-CoV-2抗体「CR3022」を基に作製された組換え体の結合カイネティクスを測定しています。得られたデータは、論文で発表されているデータと非常に良く一致していました。結合カイネティクスは、異なるFcドメインを有する組換え抗体を用いて測定しました。条件が異なるにもかかわらず結果は一致し、新規の捕捉試薬であるNano-Capture Ligand™の信頼性と再現性を実証しています。

 

アプリケーションノート[PDF]