CA IX (11443-1-AP)の物語

炭酸脱水酵素(CA)とは?

炭酸脱水酵素(CA:carbonic anhydrases、EC 4.2.1.1)は、二酸化炭素と重炭酸塩(炭酸水素塩)との可逆的水和を触媒する金属酵素のファミリーです。同定されたものの中には、8つの細胞質タンパク質(CA I、CA II、CA III、CA VII、CA VIII、CA X、CA XI、CA XIII)、2つのミトコンドリアマトリックスタンパク質(CA VA、CA VB)、1つの分泌タンパク質(CA VI)、2つのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカータンパク質(CA IVおよびCA XV)、ならびに3つの膜貫通タンパク質(CA IX、CA XII、CA XIV)があります。

CA IXとは?

炭酸脱水酵素IX(CA IX)は、低酸素状態に応答して最も幅広く発現する遺伝子です。その細胞内pH維持における重要な役割は、癌細胞が細胞外環境の毒性条件に適応する手段を意味しています。多くの腫瘍タイプにおけるCA IXの発現は、腫瘍の低酸素状態の一般的なマーカーであることの関連性を示しています。さらに、その発現は、複数の腫瘍タイプにおける臨床転帰の予後と密接に関連しています。上記の事実は、全て薬物療法の潜在的な標的としてのCA IXの位置づけを示唆するものです。

なぜCA IXは重要なのか?

CA IXタンパク質は、主に次の3つの側面に関与しています:

1. 診断マーカーとしてのCA IX

1986年に、モノクローナル抗体G250を使用して、腎細胞癌(RCC:renal cell carcinoma)に特異的な新規マーカーが発見されました。様々なRCCサブタイプの中で、淡明細胞型腎細胞癌(CCRCC:clear cell renal cell carcinoma)は最も高いCAIX発現を伴います。このタンパク質はCCRCC症例の97%で発現しており、正常な腎組織では発現していないようです。したがって、CA IXは腎悪性腫瘍の診断マーカーとなる可能性を有しています。しかし、その発現は、多数のRCCサブタイプに関連しているだけでなく、全ての固形腫瘍にも関連しています。腫瘍由来の細胞株および組織標本の大規模研究により、子宮頸部および子宮体部、卵巣、消化管、肝臓、膵臓、肺、頭頸部、唾液腺、体腔、ならびに皮膚の特定の癌におけるCA IX発現が明らかにされました。したがって、CA IXは悪性腫瘍の異なるタイプ/サブタイプの特異的マーカーではなく、多くの固形腫瘍における腫瘍低酸素状態の一般的なマーカーであることが示唆されています(1)。

CA9抗体(カタログ番号:11443-1-AP、希釈倍率:1:200)を使用したパラフィン包埋ヒト腎細胞癌組織スライドの免疫組織化学(40倍レンズ下)。Tris-EDTAバッファー(pH9)で加熱抗原賦活化。

CA9抗体(カタログ番号:11443-1-AP、希釈倍率:1:50)を使用したパラフィン包埋ヒト胃組織スライドの免疫組織化学(40倍レンズ下)

2. 予後マーカーとしてのCA IX

ヒト腫瘍においてCA IXの異所性発現を検出することの重要性は、その診断的性質にのみあるわけではありません。興味深いことに、CA IXの発現レベルは、複数の種類のヒト腫瘍の病期分類と生存予後にも関連することが報告されています。高レベルのCA IX発現は、子宮頸部腫瘍、直腸腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、および脳腫瘍における臨床転帰不良(予後不良)と関連しています(2)。

3. 腫瘍および転移におけるCA IX発現の検出

CA IXは一般に細胞膜上に局在しますが、あまり多くないものの細胞質にも見られる場合があります。PGドメインおよびCAドメイン等のCA IXの細胞外ドメインは、CCRCC細胞の培養培地またはCCRCC患者の体液(血液、尿)中に放出されることがあります。この放出は、おそらくタンパク質切断の結果です。可溶性の50/54kDa型はs-CA IXと呼ばれ、腎摘出後数日以内に血液から除去されます。s-CA IXの濃度は、健康な被験者では極めて低濃度です。したがって、血清、血漿、組織のELISAで分析し、様々なタイプの癌患者の臨床的検出および予後評価を行うことができます。ELISAは、腎腫瘍の非侵襲的診断向けの定量的方法となる可能性があります。血清CA IXレベルは、CCRCCの方が非CCRCCよりも有意に高く、腫瘍進行のステージの上昇と関連して増加しました(3)。転移性乳癌および外陰癌におけるCA IXの血清レベルは、予後不良と相関していました。非小細胞肺癌では、s-CA IXの高い血漿レベルが、特に初期のステージIまたはIIの癌の独立した予後バイオマーカーであると判断され、生存の有意な悪化と関連していました。また、ELISAおよび免疫細胞化学によるs-CA IXタンパク質の検出は、悪性胸水を検出するのに使用されてきました。血清s-CA IXが治療応答のバイオマーカーとして使用できる可能性は、原発性上皮性卵巣癌の患者で試験されましたが、第一選択治療中に有意に変化しませんでした(4)。

関連製品

抗原名

カタログ番号 アプリケーション
CA I 13198-2-AP ELISA, WB
CA II 16961-1-AP ELISA, WB
CA III  15197-1-AP ELISA, WB, IHC
CA IV 13931-1-AP ELISA, WB
CA VB 13342-1-AP ELISA, WB
CA VII 13670-1-AP ELISA, WB, IHC
 CA VIII 12391-1-AP ELISA, WB, IHC
CA IX 11071-1-AP  ELISA, WB, IHC, FC, IP
CA X 12953-1-AP ELISA, WB, 
CA XI 15435-1-AP ELISA, WB, IHC
CA XII 15180-1-AP ELISA, WB, IHC, FC
CA XIII 16696-1-AP ELISA, WB, IHC
CA XIV 13736-1-AP ELISA, WB

 

参考文献

1. Genega EM, Ghebremichael M, et al. Carbonic anhydrase IX expression in renal neoplasms: correlation with tumor type and grade. Am J Clin Pathol (2010)134(6):873–879.

2. Ziru L, Zhulin Y, et al. Paxillin and carbonic anhydrase IX are prognostic markers in gallbladder squamous cell/adenosquamous carcinomas and adenocarcinomas. Histopathology 2014, 921-934. DOI: 10.1111/his.12341.

3. Li G, Feng G, Gentil-Perret A, Genin C, Tostain J. Serum carbonic anhydrase 9 level is associated with postoperative recurrence of conventional renal cell cancer. J Urol (2008)180:510–513.

4. Kock L, Mahner S, et al. Serum carbonic anhydrase IX and its prognostic relevance in vulvar cancer. Int J Gynecol Cancer (2011) 21:141–148.

Blog

Posted:
14 June, 2016

Share:


Back
to top