ゲスト寄稿 | 透明化標本の抗体染色のコツ

透明化標本組織を抗体で染色する時のコツを解説します。

Ashley Juavinett著

早くも1914年には、臓器の研究を可能にすることを目標に、光を散乱する分子を除去することによって、臓器組織を「透明化」しようとする試みが記録されています。これらの初期のアプローチの多くは今日でも使用されていますが、研究者は最近、内在性蛍光タンパク質、in situハイブリダイゼーション、免疫組織化学などの現代的技術に対応したプロセスにするという期待を込めて、この100年前の問題に立ち戻っています。

2013年、Karl Deisserothと彼のチームは、脳を完全に透明化するための高度な技術を実証した際に話題となり、その延長線上で、他の臓器の透明化も行いました(Chungら、2013)。この開発により、数え切れないほどの学部生がミクロトームの前で夏休みを過ごす必要がなくなるだけでなく、同じ組織の免疫染色を繰り返し行って、脳の遠距離接続を可視化できるようになることが期待されています。

「クラリティ―」の強力な効果を実証。Chungら、2013年より。

その後、PACT(「受動的クラリティー技術」)として知られる別の方法が発表され、それ以来、脳組織透明化の競合法となっています(Yangら、2014)。実際、多くの異なる方法が最近5年間に発表されており、それぞれに長所と短所があります(下の表参照)。これらの技術のいくつかは「能動的」 (組織の透明化に電気泳動または他の何らかの方法を必要とする) ですが、ほとんどは、組織を単に複数回溶液に浸して効果的に脂質を除去する、 「受動的」な方法です。

PACT透明化法により、様々な一般的組織検査マーカーを用いた標識が可能になります。Yangら、2014年より。

表1:最近の光学クリアリング技術のまとめ:

(出版物へのリンクは記事の脚注にあります。)

 

透明化した組織の染色のヒント

これらの技術が開発されて以来、様々な研究室が、透明化した組織を免疫染色することに成功しており、実際にこれが実行可能な方法であることを示唆しています(例えば、Chungら、2013;Zhangら、2014)。それでも、最初の「クラリティ―」の報告以上に、標識を複数回繰り返すことの可能性については、あまり語られていません。これらの方法を利用されている数名の方*にお話を伺い、透明化後の免疫染色についてのヒントをいくつか集めてみました。

  1. 透明化した組織ブロックの免疫染色は、脳切片よりも時間がかかります。PACTプロトコルによると、組織の種類と大きさにもよりますが、ほとんどの免疫染色に約7~12日かかります(以下に詳しく説明します)。クラリティーを用いたある研究では、1mmの組織ブロックについて、一次抗体と二次抗体それぞれ1日で行うことができると主張しています(Zhangら、2014年、しかし、これらは比較的薄い組織サンプルであることに注意してください。元の論文では、一次抗体と二次抗体それぞれ2週間とされています)。しかし、ほとんどの研究では、時間の下限が報告されており、一般的には、時間が長いほど良いということを覚えておいてください。2mmの脳組織の塊の場合、当研究室では一般的に2週間かけて染色します。

  1. 抗体溶液は、可能な限り、指示された回数よりも多い頻度で交換してください。インキュベーション時間が長い場合は、これにより組織の標識に必要な時間の短縮に役立ちます!

  1. 可能な限り小さなフラグメントを使用してください(二次抗体の場合)。二次抗体としては、F(ab')2またはIgG全体ではなく、Fabフラグメントの方が効果的です。抗体(フラグメント)が小さいほど、組織に浸透しやすくなります。

  1. 組織切片に通常使用するよりも高濃度の抗体溶液を使用してみてください。私たちの研究室では、約2mmの脳組織の塊に対して1:200希釈を推奨していますが、自身の使用しているサンプルに何が最適なのかを実験してみる必要があります。希釈倍率の異なる抗体溶液を同じインキュベーション時間反応させて抗体価測定実験を行い、実験に最適な希釈液を決定することは常に有用です。

  1. できれば、厚さが数百ミクロンを超えないよう、組織を小さくスライスしてください。抗体が通過する組織が少ないほど良いのです。組織の周辺部の方が染色が良くなることを許容できるならば、心配することは少なくなります。

  1. 私たちにとっては、PACT法はクラリティー法よりも免疫染色に適しています。PACTマトリックスは少し緩い(マトリックスハイドロゲルに組織を埋め込まない)ので、抗体が浸透するスペースが多くなります。つまり、PACTと組み合わせて免疫染色を行った方が効率的なのではないでしょうか。私たちの研究室では、他の透明化法を用いた免疫染色はまだ試したことがありません。

Chungらは、同じ脳組織で複数回の免疫染色(THの後GFAP)を行っています。Chungら、2013年の最初の報告書より。

一般的には、最適な標識ができるようになるまで、組織の大きさ、インキュベーションの長さ、透明化の種類、および抗体の濃度を変えていくのが最善策です。

特にProteintech製品を用いて、抗体標識と併用して透明化を行った経験はありますか? 是非、お聞かせください。

*キャロウェイ研究室のEsther Richler博士およびその他のメンバーの方々のアドバイスと洞察に感謝します。

表1の参考文献

Hama et al., Nat Neurosci. 2011; 14(11):1481-8.

Ertürk et al., Nature Protocols 2012; 7(11):1983-95.

Chung et al., Nature 2013 16;497(7449):332-7.

Ke et al., Nature Neurosci. 2013; 16(8):1154-612013.

Kuwajima et al., Development 2013; 140(6):1364-8.

Susaki et al., Cell 2014, 24;157(3):726-39.

 Yang et al., Cell 2014, 14;158(4):945-58.

 

ゲストブロガーのプロフィール

Ashley Juavinettは、UCSDの神経科学博士課程の学生、NSFの大学院研究員、そして科学ライターを目指しています。Salk Institute(カリフォルニア州ラホーヤ)では、アシュリーはin vivoイメージングを用いて、マウスの視覚知覚の基礎となる神経回路を研究しています。現在は、共同科学ライティンググループ「NeuWrite San Diego」(http://www.neuwriteSD.org)を共同運営し、自身のブログ(http://scramblingforsignificance.blogspot.com)で神経科学や社会について執筆を行っています。

Ashley JuavinettのTwitterはこちら:@ashleyjthinks

 

 

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Posted:
17 March, 2015

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