乳がん治療後に発症する二次がんについて
乳がん治療後のがんサバイバーが発症する二次がんについて解説します。
二次がんは、最初のがんの治療・外科的切除後に新たに発生するがんで、再発がん、あるいは遠隔臓器に移動していたがん細胞が増殖する転移性がんとは異なる由来のがんを指します。乳がん治療後の二次がんの場合、治療対象の乳がんとは異なる対側乳がんや、肺がん・肉腫・白血病・子宮がん等の乳がん以外のがんを発症します。がん患者の生存率が向上して寿命が延びるなか、二次がんの発生頻度は増加しつつあります。
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目次 |
二次がん発症の原因
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遺伝的要因:BRCA1/2遺伝子変異等の素因は、2度目の原発性乳がん・卵巣がん・その他がんを発症するリスクを有意に高めます。他に、リンチ症候群(Lynch syndrome)、家族性大腸ポリポーシス(FAP:Familial Adenomatous Polyposis)等に認められる特定の遺伝子変異を有する患者は、大腸がん発症のリスクが上昇します。
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放射線治療:最初の乳がん治療に放射線治療を選択し電離放射線に曝露した患者は、放射線によるDNA損傷の影響等により、肺がん・骨系の肉腫や胸部内皮細胞に由来する血管肉腫の発症リスクが高まります。DNA損傷の他にも、放射線照射による微小環境の変化や、炎症性サイトカイン分泌等により二次がんの発生リスクは高まります。
- 化学療法:化学療法に用いられるプラチナ製剤やアルキル化剤による細胞毒性は、主に薬剤の作用が原因となって生じるDNA損傷や染色体異常によるもので、骨髄における造血障害を引き起こします。造血幹細胞(HSC:Hematopoietic stem cell)に変異等の異常が生じると、潜伏期を経て骨髄異形成症候群(MDS:Myelodysplastic syndrome)や急性骨髄性白血病(AML:Acute myelogenous leukemia)を発症します。化学療法を施行すると染色体異常が増加することが報告されており、この染色体異常は様々なタイプの白血病の発症と関連しています。また、造血機能障害による健常な造血幹細胞数の減少は免疫系細胞の産生低下にもつながり、腫瘍形成を抑制する免疫系の作用の弱体化に寄与すると考えられます。
- タモキシフェン:タモキシフェンはホルモン受容体陽性乳がんに対して高い有効性を発揮するものの、エストロゲン様の作用を有するため、その長期服用によって子宮体がん発症のリスクが約3倍上昇します。
二次がん発症のリスクを抑えるには
- 生活習慣の見直し:がんを経験した患者は、がんに罹患したことがない同年代・同性の人々に比べ、別に新たながんを発症するリスクが高くなります。したがって、リスク因子を把握し、運動習慣・健康的な食生活の実践、喫煙や飲酒を控えるといった予防的措置を取ることが重要です。
- 予防的切除術:すでに乳がんを経験したBRCA1/2遺伝子変異保有患者は、リスク低減乳房切除術で対側乳がん発症のリスクを抑えることができます。
- 陽子線治療:陽子線治療は標的とするがん病巣へ選択的に高線量を照射可能なことから、光子線(X線)を用いる従来の放射線治療よりも副作用の低減を期待できる治療法です。水素原子核の陽子を加速器で加速させてできる陽子線(粒子線)をビーム状に照射し、任意の深度で最大のエネルギーを放出して停止するという陽子線の特性を利用することで、周辺の正常組織への照射の影響を最小限に抑えることができます。
- アジュバント療法(術後補助療法):外科的切除・放射線治療等と併用することで、治療後も残存するがん細胞によるがんの再発や転移のリスクが低減します。乳がん治療の場合、がんのタイプや遺伝子型等に応じてホルモン療法や分子標的薬を用いる治療等のいくつかの選択肢があります。ホルモン療法はがん細胞の増殖を抑制し、対側乳がん発症リスクを低減します。一部の患者は化学療法を回避または省略できるため、化学療法に関連した血液系の悪性腫瘍の発症リスクを低減できます。
二次がんの発症原因について、がん治療による要因と乳がん自体による要因を個別に分離して評価することは困難です。しかし先行研究によれば、化学療法や放射線治療による乳がん死亡率減少効果は、これらの治療を原因とする二次がんの発症リスクを上回ることが明らかになっています。
乳がんの既往がある患者に対しては、二次がん発症の徴候をごく初期のうちから検出・追跡できるよう綿密な経過観察を行います。迅速かつ非侵襲的なアプローチとして、血液等の検体を調べるリキッドバイオプシー検査を実施するほかに、必要に応じて骨髄穿刺による骨髄検体の検査を実施します。こうした検査では、AMLやMDSの初期マーカーとなり得る造血器系の異常を検出可能です。
プロテインテックの関連製品
乳がん治療後の二次がんの検出に利用可能なプロテインテックの関連製品をご紹介します。
CD34関連製品:造血幹細胞はCD34陽性を示し、AMLやMDSのような血液疾患のマーカーとして利用されます。
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図1. ヒト血球細胞のフローサイトメトリー |
HLA-DR関連製品:主に抗原提示細胞に発現するMHCクラスII分子で、AMLやMDSのような血液疾患のマーカーとして利用されます。
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図2. ヒト末梢血単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)のフローサイトメトリー:1x10^6個のPBMCの細胞膜表面をCoraLite® Plus 488 Anti-Human HLA-DR Rabbit IgG RecAb(カタログ番号:CL488-FcA65560、クローン番号:L243、5 µl、赤)、またはCoraLite® Plus 488 Rabbit IgG Isotype Control Recombinant Antibody(カタログ番号:CL488-FcA98136、クローン番号:240953C9、5 µl、青)を使用して染色した。細胞:固定処理なし。 |
BRCA1/2関連製品:遺伝子修復に関与する分子で、BRCA1/2遺伝子変異は乳がん・卵巣がん発症と関連するリスク因子となります。
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図3. BRCA1 Polyclonal antibody(カタログ番号:22362-1-AP、希釈倍率1:50)を使用したパラフィン包埋ヒト乳がんスライドの免疫組織化学染色。 |
CTLA4関連製品・PD-L1関連製品:CTLA4は特定の免疫細胞、PD-L1は特定の免疫細胞や腫瘍細胞に発現する免疫チェックポイント分子で、免疫抑制に関係するバイオマーカーとして利用されます。
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図4. Mouse CTLA-4 ELISA Kit(カタログ番号:KE10177)の標準曲線。 |
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図5. PHA刺激ヒト末梢血単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)のフローサイトメトリー:1x10^6個のPBMCの細胞膜表面をFcZero-rAb® PE Anti-Human CD3 Rabbit Recombinant Antibody(カタログ番号:PE-FcA65569、クローン番号:OKT3、5 µl)、FcZero-rAb® APC Anti-Human PD-L1/CD274 Rabbit Recombinant Antibody(カタログ番号:APC-FcA98062、クローン番号:240721H8、5 µl)で共染色した。左:PHA刺激処理なし、右:PHA刺激処理。細胞:固定処理なし。 |
Lucie Reboud著(マンチェスター大学博士課程在籍、がん領域専攻、プロテインテック インターン生)
参考文献





