組換えタンパク質とペプチドのどちらを抗原にするか?その長所と短所

ペプチド免疫原と全長タンパク質免疫原


免疫原とは?

免疫原とは、抗体産生時に使用される抗原のことです。免疫原の構造は、抗体作製の最も重要な要素の1つであり、免疫原の設計が不適切である場合、精製された抗体は、非特異的反応を示す場合や、力価が低くなる場合があります。さらに、精製抗体のエピトープ領域は、免疫原によって決定されるため、抗原構造に関する知識は実験計画において非常に重要です。免疫原の設計には多くの側面がありますが、本稿では、ポリクローナル抗体の免疫原としてペプチドまたは完全長タンパク質を使用する場合の、それぞれの長所と短所に注目します。

ペプチド免疫原

ペプチド免疫原は、タンパク質の単一のアイソフォームを認識する抗体の作製に有用です。さらに、リン酸化等の特定領域に対する翻訳後修飾を検出可能な抗体の作製にも有用です。しかし、ペプチドは完全長の組換えタンパク質と同じようにフォールディングしているとは限らないため、ペプチド免疫原を使用して作製した抗体は、特異性が低い、あるいは親和性が低い場合があります。また、ペプチド抗原はペプチド鎖長が短いことから親和性の低い抗体を産生する傾向にあり、エピトープの選択肢が少ないため、リンパ濾胞での親和性成熟が制限されます(1)。

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全長組換えタンパク質免疫原

全長組換えタンパク質免疫原を使用する場合、タンパク質の任意の領域に対する抗体が産生されます。したがって、タンパク質免疫原は、前駆体タンパク質の経時的なプロセシングの研究等の、修飾されていくタンパク質を追跡する実験に使用する抗体を作製する場合に最も適しています。さらに、種間で保存性の高い領域がエピトープとなる機会が増加するため、得られる抗体は多くの生物種で反応性を示す可能性があります。同様に、タンパク質内のある領域が、特定のアプリケーションにのみ適している部位かもしれないため、全長タンパク質を免疫原として使用すると、多くの場合、様々なアプリケーションに利用可能な抗体を作製できます。

ペプチド免疫原と全長タンパク質免疫原:最適なのはどちら?

まとめると、ペプチド免疫原は、特定のタンパク質のアイソフォームおよび翻訳後修飾部位の研究に非常に適した抗体を作製でき、全長タンパク質免疫原は、その他のほとんどの実験に適した抗体を作製できます。プロテインテックでは、目的とする抗体の作製にあたり、どの免疫原が最も適切であるかに応じて、ペプチド免疫原と全長タンパク質免疫原の両方を使用しています。また、すべての抗体の作製に使用した免疫原配列情報を提供していますので、お客様の実験に最適な抗体をご選択いただけます。(※組換えタンパク質免疫原配列はホームページに掲載しております。ペプチド免疫原配列については、部分的に開示しており、免疫原配列とその前後を含む領域をお問い合わせごとに都度お答えしております。)当社のポリクローナル抗体に関する詳細については、プロテインテックの一次抗体(ptglab.co.jp)をご覧ください。

参考文献

  1. Balthasar A. Heesters, Riley C. Myers & Michael C. Carroll. Follicular dendritic cells: Dynamic antigen libraries. Nat Rev Immunol. 2014;7:495-504.