学術発表を成功させるための7つの秘訣

研究成果を口頭発表する恐怖との闘い


人前で話すのが怖い?

プレゼンテーションは、自分の研究成果を共有し、その分野で評価を得るための重要な要素です。しかしながら、効果的かつプロとして研究を発表する方法について学ぶ専攻コースはありません。通常、指導教官は科学的な指導には力を入れる一方、博士課程の学生のプレゼンテーションスキルの向上には注力しない場合も多くあります。突然に発表を指示され、専門家や同輩の前に立たされることは、率直に言って恐ろしい事態です。

多くの人々は、この課題に直面して恐怖を感じます。誰もが口頭発表に対しては、このような反応を示すことが一般的です。研究発表とは、疑いの余地なく大変なタスクであり、科学者を名乗る者にとって重圧のかかる仕事の1つです。

以下のヒントは、恐怖心を克服し、プレゼンテーションにも自分自身にも自信を持てるようにしてくれます。

何から始めればいいのでしょうか?まずは、緊張する理由を見つけ出しましょう。
メンタルブロックの恐怖

プレゼンテーションの途中で「メンタルブロック(行動を妨げる心理的障壁・思考状態、または何かを思い出せない状態)」に陥っても、全てが終わってしまうわけではありません。

あなたが思考停止状態に陥っていることに気づかれないように、一旦話すのをやめてみましょう。聴衆は単にあなたが次に述べる内容に向けて溜めを作っているだけだと思うはずです。深呼吸をして、慌てずに、軌道修正できるように時折ノートを見ても良いことを思い出してください。

それでも、文字通りすべてを忘れてしまうことを恐れていますか?その場合、リラックスしている時に、記憶を頼りに各スライドの要約を書き出す発表準備をしておいてください。こうした訓練を事前に実施しておくと、気が動転した時であっても一連の記憶を無意識に思い出すことができます。

質問に対する恐怖

聴衆の中に大抵1人は「質問をしても良いですか?」という人物がいて、スライド毎にプレゼンテーションが中断される場合があります。質問の内容が話の流れから逸脱すると考えられる場合は、聞き手に対して礼儀正しく、プレゼンテーションの終了後に全ての質問をしていただくように求めましょう。そうすれば、プレゼンテーションが終わった後の質疑に関する予測もでき、Q&Aの時間に気まずい沈黙が流れることもありません。

強迫観念

多くの人々は、自分達の緊張した様子に対して、知識不足が原因で不安になっていると思われることを厭います。もちろん、そのようなことは全くありません。99%の科学者は、全員の視線を浴びることを意識して、登壇する時の緊張を抱えています。プレゼンテーションとはそういうものなのです。

あなたの研究をあなたよりも知っている人はいません。聴衆は、あなたの研究に興味を持っているから、そして学びたいからこそ、あなたの発表を聴きに来ているということを思い出してください。あなたを威圧したくて参加しているわけではありません!このような視点を持つことで、研究発表のストレスを大幅に減らすことができます。

準備は非常に重要です。発表を成功させるための7つのステップ:
1. 聴衆を知る

聴衆を理解する最良の方法は、自分が聴衆の立場になってみることです。自分よりも順番の早い演者の発表に参加して、実際に聴衆を体験する機会を得ましょう。また、自分が話しかけている人物がどういう人物か見極めることは重要です。聴衆はその分野の専門家ですか?ラボのメンバーですか?それとも学部生ですか?彼らの科学的素地、興味、職種、職位を把握し、聴衆の知識レベルに合わせたプレゼンテーションを心がけましょう。

聴衆が初めて耳にするかもしれない重要な専門用語を使っている場合は、プレゼンテーションの早い段階で明確に定義を説明しましょう。一旦、聞きなれない専門用語で混乱させてしまうと、聴衆は発表内容を理解することが困難になってしまいます。

2. ポジティブに考える

ネガティブな考えに支配されないようにしましょう。「私にはできる」「準備は万全だ」と自分に言い聞かせましょう。もし友人が自分の立場だったら、相手を励ますために自分は何を言うかを考えてみてください。前向きな考え方を持つと、フィードバックや批判を受け止めることができ、物事が計画通りに進まない時でも忍耐力を持ち、長時間ラボで活動することができるようになります。このことは、科学者としてのキャリア形成に大いに貢献します。終始ポジティブな考え方を持つことは、長期的に成長し成功する一助となるでしょう。

3. プレゼンテーションを管理しやすいチャンク(塊)に分解する

例えば、要旨、イントロダクション、結果、考察のように、プレゼンテーションを小さく分割しましょう。順番に各セクションに触れ、スピーチのやる気を削ぐような大きな話ではなく、短い話に分割します。簡潔で一目でわかりやすいメモを心がけ、文章全体ではなく短いフレーズを書き込み、各ページに詰め込みすぎないようにしましょう。箇条書きと短いフレーズを使用することで、メモを凝視してアイコンタクトが無駄になることや、台本を読んでいるように見られることを防ぐことができるでしょう。
同様のアプローチをスライドにも適用します。つまり、簡潔にまとめ、各スライド上のテキストの分量を制限します。簡潔ではないスライドは、何が書かれているのかと聴衆を混乱させ、聴衆の意識をあなたが伝えたい内容からずらしてしまいます。
時には、話をしなくても良いタイミングもあります。代わりに、質問をして聴衆の参加を促しましょう。これにより聴衆の学習経験の効果が増し、スポットライトがあなたから聴衆に移動します。

4. リハーサルをする

内容に慣れて、話す時の適切なタイミングをつかむためには練習が一番です。

ただ頭の中でスライドを読むだけではなく、制限時間内に各スライドを最後まで説明する自分を思い浮かべ、自分で自分の話に耳を傾けてください。※昼休みや休憩時間まで続く発表ほど聴衆を閉口させるものはありません!

慣れるためには、実際に発表を行う講義室で練習することが一番です。この方法は、自分の声の伝わり方や立ち位置を把握でき、ノートパソコンの接続方法やプレゼンテーション用ファイルの開き方等の(見落とされがちな)技術的問題を解消することができます。

5. ティーチング/メンタリング

準備時間が十分にある場合は、他の人の前で話す機会を作ってみましょう。科学的なプレゼンテーションをする必要はなく、ラボのミーティングや抄読会で自分の意見を述べることや、学部生向けの小規模なメンターセッションを開催する等のごく簡単なことで良いでしょう。ラボの仲間にあなたの研究内容について容赦なく質問してもらうように頼めば、好奇心旺盛な聴衆への対策になるでしょう。慣れ親しんだ環境で、様々な聴衆を相手にして、人前で話す練習をすることは、自信につながり、仕事に対する忌憚のないフィードバックを得る上でも最適な方法です。

6. リラクゼーション法

呼吸を忘れないようにしましょう!これは非常に単純なことのように聞こえますが、深呼吸をすることは、あなたの脳に酸素を供給し、緊張状態を克服する手助けになります。呼吸がコントロールできるようになると、自信がつき、集中力が高まり、言いたいことを思い出すことができるようになるでしょう。

7. ゆっくり落ち着いて

プレゼンテーションをする場合、あなたが話している内容を聴衆が聞き取ることができ、かつ理解できることが重要です。聴衆があなたの発表の内容を考えることができるように、重要なポイントで間を空けることも良い方法です。深呼吸をして、普段よりも少しだけゆっくりと話すように努めてみてください。

忘れないでください

プレゼンテーションの緊張は当然であり、超人でもない限り、緊張から逃れることは一生困難なことです。最終的な目標は、緊張をモチベーションと決意に変えて、自分自身に打ち勝ち、素晴らしいプレゼンテーションを披露することです。

そして、憶えておいてほしいことは、自分が感じているほど緊張しているようには見えないということです!

参考文献

Marilynn Larkin. (2015). How to give a dynamic scientific presentation. Available at: https://www.elsevier.com/connect/how-to-give-a-dynamic-scientific-presentation. Last accessed 2nd August 2018.