特集 : 免疫応答

免疫応答マーカーおよび関連抗体をご紹介


背景

ヒト免疫系は、毒素やウイルス感染、細菌、寄生虫から身体を保護するために働く様々な細胞種や分子の集合によって構成されます。免疫学は、この複雑なネットワークのあらゆる側面を含みますが、本分野は免疫細胞によって統合されます。免疫学の中心的なポイントは、多くの異なる免疫細胞に対して「理解、同定、区別」を行うことです。免疫学は、自然免疫応答と適応免疫応答の両面で研究されており、病原体認識、免疫細胞の活性化、動員、サイトカイン分泌、炎症、抗体産生等のプロセスを含みます。細胞マーカーは、特定の免疫細胞集団を同定するために有用なツールです。本稿は、最も一般的に使用される細胞マーカーの選択、および免疫学に使用される広範な抗体の選択について説明します。

ナチュラルキラー (NK) 細胞 & NCAM1/CD56

ナチュラルキラー(NK: Natural killer)細胞は、急性運動に対して最も応答性の高い免疫細胞です。生理的ストレスへの感受性は、免疫防御機構の役割と関連付けられることで、定期的な身体活動と健康状態の間に関連性があることが示されています。

NK細胞は、CD56としても知られるNCAM1 (Neural cell adhesion molecule 1) の発現強度に基づいて、少なくとも2つの異なるサブセットからなる不均一性の集団です。NCAM1は、神経-神経接着、神経突起束形成、神経突起伸長、シナプス可塑性、神経発生、神経形成に関与する細胞接着分子です。NCAM1は、NK細胞に加えて、ヒトニューロン、グリア細胞、骨格筋細胞の表面上に発現します。免疫監視機構で重要な役割を果たすCD4+ CD8+ T細胞および樹状細胞の拡大にも関与します。NCAM1は、分子量120kDa(761 アミノ酸残基 (aa) (glycosylphosphatidylinositol (GPI) anchored))、140kDa(848 aa, short cytoplasmic domain)、180kDa(1120 aa, long cytoplasmic domain)の3つの主要なアイソフォームを発現します。

NCAM1/CD56は、小細胞肺癌や神経内分泌腫瘍に対する感受性マーカー、診断上有用な免疫組織化学的マーカーとしての利用が研究されています。

製品フォーカス:

NCAM1/CD56 抗体

KD/KO 検証済み

41 文献

カタログ番号:  14255-1-AP

抗体タイプ:  ウサギポリクローナル

アプリケーション:  ELISA, FC, IF, IHC, WB

 NCAM1抗体の免疫組織化学染色検証

NCAM1抗体(カタログ番号:14255-1-AP、希釈倍率 1:400、ヒト結腸組織スライド (パラフィン包埋切片) の免疫組織化学染色。

要のサイトカイン – インターロイキン-6の多くの表情

インターロイキン-6(IL6: Interleukin-6) は、炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの両方として作用するインターロイキンです。IL-6は、炎症とB細胞成熟において化学的な活性を示す内在性の物質です。

IL-6は、感染性炎症の初期段階において、異なる病原体関連分子パターン(PAMP) を有するToll様受容体(TLR)の刺激直後に、単球とマクロファージによって産生されます。熱傷や外傷などの非感染性炎症では、損傷や瀕死細胞からの損傷関連分子パターン(DAMP)がTLRを刺激してIL-6を産生します。このような急性IL-6発現は、様々な細胞集団を刺激することによって、宿主防御で重要な役割を果たします。IL-6は、インターロイキン-11とTNF-beta を含む他の炎症性サイトカインに応答して、単球とマクロファージによって放出されます。

IL-6は、分泌される場所に依存して、複数の形態と機能を示します。また、IL-6は、T細胞の発達に関連します。IL-6は、前駆細胞の発生に必要であり、B細胞が分化・増殖し、B細胞から形質細胞(plasma cells)になることを促進します。IL-6はまた、白血球、赤血球、血小板等、血液細胞の発生で重要な役割を果たします。IL-6は、破骨細胞の活性化と骨粗鬆症にも関連します。また、血管内皮増殖因子(VEGF) の分泌を誘導し、血管成長の促進、炎症反応における血管透過性をもたらします。

IL6の遺伝的変異は、全身型若年性関節リウマチ(RASJ:rheumatoid arthritis systemic juvenile) に関連します。またIL6プロモーターの多型はHIV感染男性におけるカポジ肉腫発症の指標となる可能性が示唆されています。

製品フォーカス:

IL-6 抗体

KD/KO 検証済み

490 文献

カタログ番号: 21865-1-AP

抗体タイプ: ウサギポリクローナル

アプリケーション: ELISA, FC, IF, IHC, Neutralization, Cell treatment, WB

IL6抗体の免疫組織化学染色検証

IL6抗体(カタログ番号:21865-1-AP、希釈倍率 1:50、ヒト扁桃炎組織スライド (パラフィン包埋切片) の免疫組織化学染色。

TNF-α(TNFA/TNFSF2) の複数の役割

TNF-α(TNFA/TNFSF2/腫瘍壊死因子アルファ型)は、炎症、宿主防御、免疫応答、アポトーシスを調節する多機能性の重要なサイトカインです。TNF-α によるシグナル伝達は、TNFR1(TNFRSF1A、CD120a、p55)およびTNFR2(TNFRSF1B、CD120b、p75)によって媒介されます。TNFR1は、広く発現します。一方、TNFR2は、CD4+ CD8+ Tリンパ球、内皮細胞、ミクログリア、オリゴデンドロサイト、ニューロンのサブタイプ、心筋細胞、胸腺細胞、ヒト間葉系幹細胞等、一部の細胞にその発現は制限されます。TNF-αは、主にマクロファージによって分泌されます。

主要な機能は、炎症反応の誘導です。主にNFkBシグナルとAP-1シグナル伝達経路を介して遺伝子転写のアップレギュレーションに関与し、多数の遺伝子発現を誘導します。TNFは、自然免疫や細菌、真菌、寄生虫病原体に対する宿主防御で重要な役割を果たします。結核菌(Mycobacterium tuberculosis) 等の細胞内寄生生物に対する宿主防御において特に重要です。TNF-αの調節不全は、慢性関節リウマチ、移植片対宿主病に加えて、腫瘍形成、腫瘍転移、ウイルス複製、敗血症ショック、発熱、炎症、クローン病を含む自己免疫疾患に関与することが報告されています。

近年、動物モデルや患者でのTNF-α 作用の遮断は、いくつかのT細胞依存性の自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症や1型糖尿病)の疾患活性や重症度の増加を引き起こす場合があることが報告されています。

製品フォーカス:

TNFR2 抗体

KD/KO 検証済み

27 文献

カタログ番号:  19272-1-AP

抗体タイプ:  ウサギポリクローナル

アプリケーション: ELISA, FC, IF, IHC, IP, WB

TNFR2抗体の免疫組織化学染色検証

TNFR2抗体(カタログ番号:19272-1-AP、希釈倍率 1:50、ヒト脾臓組織スライド (パラフィン包埋切片) の免疫組織化学染色 (40X)。